オートレースは,通常8人がオートバイに乗り,1周 500m のコースを 6周-10周して順位を競う. 選手の強さにより,スタート位置が後方になるハンデがあり,全車同時にゴールするように調整するしくみとなっていて,オートレースの面白さのひとつとなっている.
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現在の船橋オートレースは船橋市と千葉県が施行し,土地は三井不動産(当初の土地所有者は朝日土地興業),建築物とその管理をよみうりランドがおこなっていた.そのオートレースの始まりは,1950年(昭和25年)5月27日に小型自動車競走法(通産省管轄,現経済産業省)が公布施行されて公営オートレースは始まった. だが,当初の施行者は,都道府県内1カ所と京都市,大阪市,横浜市,神戸市,名古屋市の大都市に限られ,船橋市は施行者になれなかった.
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そして,全国で初めて千葉県の主催で第1回オートレースが1950年(昭和25年)10月29日に開催された. 当時はまだ,専用の船橋オートレース場はなく,船橋競馬場のダートコースを使っての開催で,コースも舗装化されていなかった. この開催により,船橋オートレース発祥の地とよばれるようになった.
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その後,1954年(昭和29年)6月に小型自動車競走法が改正され,大都市以外にも新たにオートレース場が設置された市町村が施行できるようになった. だが,競馬場での開催は,凄まじい爆音による競走馬への影響が大きく,競馬場のダートコースを使っての施行ができないことになってしまった.
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新しいオートレース場設置に対して,船橋市と市川市が手をあげた. 激しい誘致合戦を繰り広げた結果,すでに実績のあった船橋市千葉県の共同施行となった. だが,そのとき船橋市には,まだ移転先のめどはなかった.
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船橋ヘルスセンター(ららぽーとTOKYO-BAYの前身)の開発と運営をおこなっていたのが朝日土地興業(株)だった.
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当時の朝日土地興業は,自動車レースの船橋サーキット場も運営していた. しかし,船橋サーキット場の運営が思わしくなかったこともあり,サーキット場の施設の一部がそのまま使えることなどから,オートレース場の移転先に決まった. それが,現在の船橋市浜町2丁目船橋オートレース場だ. その後,オートレースの収益は,船橋市の一般会計に大きく貢献し,公園や学校の整備に広く役立てられた.
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だが,バブル崩壊以降,どこの公営ギャンブルも売り上げが減少し,特にオートレース場は厳しい経営に追い込まれていた. 船橋オートレース場も,自転車競技法に基づく交付金支払い猶予特例制度の資金を2005年度で食い切り,赤字垂れ流しの状態となってしまった. オートレース場の廃止も時間の問題だった.

<補足説明>交付金支払い猶予特例制度とは,
通常施行者は,レース開催の売上額のうち約 3% を競輪振興法人(JKA)に30日以内に交付しなければならないことになっている. しかし,競輪事業の収支が著しく不均衡で,引き続き収支不均衡状態が1年以上継続することが見込まれる場合,収支改善計画を作成し経済産業大臣の同意を得て,交付金の支払いを最長5年間猶予することができることになっている. 問題の先送り制度ともいわれている.
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そのような状況の中,「船橋市がオートレース事業から撤退する方針を固めた」と報道したのは,2004年9月11日付の産経新聞だった. この報道に対して,船橋市は市長名で記事の訂正などを求める抗議文を出した. だが,従業員の退職金算定など具体的な撤退費用の算定に入っていたことなどから,廃止案も含めて検討していたこととは事実で,オートレース事業から撤退したかったのは,船橋市よりも千葉県側だったようだ.
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そんな崖っぷちのオートレース場を助けたのが,競艇(ボート)の生みの親笹川良一の息子の笹川尭が設立した日本トーター(株)だった. その日本トーターが提案したのは,包括的民営委託方式だ. 包括的民営委託方式とは,投票券発売,従業員管理,開催広告までの全ての業務を日本トーターに完全委託し,経営リスクも含めて全面的に委託するものだ. 売上げの一定率の金額を委託元(施行者)である船橋市千葉県に支払うしくみのため,船橋オートレース場の経営が赤字になっていても,年間4000万円の黒字を出すので,船橋市にとっては都合のよいしくみだ. このまま赤字のままであろうが,5年後の2017年度ごろには累積債務が解消する.
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だが,施行側が黒字といっても全体として赤字であれば,道義上オートレース事業を続けることは難しいだろう. 日本トーターは民間企業だ. いつまでも,赤字を出し続けることもできない...
その日本トーターがまず手を付けたのが,船橋オートレース場の経営多角化だ. 経営安定化のため,活用度合いの低い山側の施設の一部を使って競輪場外車券売場サテライト船橋を,2008年12月23日にオープンさせた. 同じ経済産業省管轄のため,圧力をかけるようなところはなかった.
今回閉鎖した,WITH(ウィズ)の場所.
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にもかかわらず,2012年度の実績見込みも,当初売上予算より約10億円のマイナスになる見込みだ. 船橋オートレース場の再建の道はまだまだ遠い.
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問題なのは,新たな客の開拓ができていないことだ. それを証明するように,船橋オートレース場の入場者には若い世代と女性の姿がほとんどない. 定年退職したとおもわれる高齢者ばかりだ. 高齢化とともに,さらに入場者数は減るばかりだ. このままであると,あと10年もすれば,入場者数は半減するであろう.
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そのような状況の中,施設のコストダウンもおこなっている. 施設の光熱費や清掃などの管理費の節約のため,WITH(ウィズ)を2012年4月から閉鎖した.
2008年当時の WITH(ウィズ)のようす.
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だが,施設ののコストダウンは,全体の赤字から見れば微々たるものだ. にもかかわらず,日本トーター赤字を出してまで,船橋オートレース場を運営を受託する理由はなんなのだろうか. より収益性が高い公営カジノの解禁が目前となっている. 「今のうちに,船橋市や千葉市,よみうりランドなどと深い関係を作り上げ,今後カジノが解禁されたときに,その運営管理を受注するための先行投資のひとつではないか」と説明するギャンブルファンもいる.

<補足説明>
施行者(船橋市と千葉県)と日本トーターとの委託契約は,船橋オートレス場の売り上げが200億円以下の場合,船橋市千葉県に入るのは 年間総額 8000万となっている. それを,船橋市千葉県が半々で分け合うため, 4000万づつとなる. さらに,事務所経費(人件費も含む)として3000万がかかるため,残り 1000万が船橋市の一般会計に繰り入れられる. この 1000万が,今までの負債に充てられる. しかし, 2011年度からの制度変更により,売上金から40億を控除した 1% も加算できるようになった. そため,4000万は 6200万ぐらいになっているものと思われる. 船橋オートレス場の撤退には,1億6,000万くらいの費用がかかると試算されたが,この費用にも充てられるものと思われる.
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